泌尿器科へ
世間一般の男性は、精液検査をして欲しいとお願いされるとまずは男のプライドとやらが先行して、
『は?何で俺が?』
と思われるらしいのですが、
うちの旦那は快く引き受けてくれました。
どこからか不妊の原因の半数が男性側にあるという情報を仕入れていたみたいです。それでもまさか俺が!なんて文句を言わずに快く引き受けてくれた旦那に感謝しています。
しかし問題はこの先。うちの旦那、自分の予定をまーーー立てられない。その予定のために早起きなんてまずしない。
初めて病院に行こうと思った時は、
『寝坊した〜』
二度目は
『受け付け11:30までやった〜』←いやまずそこ1番に調べるでしょ
三度目は
『土曜日はなぜか受け付け10:30までやった〜』
もう我慢の限界でさすがにこの時はキレました。
私は妊娠するためにヨガに行ったり体温めてたり鍼に行ったり家でお灸したり産婦人科でおっさんの前で何度も何度も股開いてんのに貴方は一体何をしているんですかと。
ここまで怒った私をみてようやくヤバいと思ったのか、4度目でやっと病院に行ってくれてのでした。
病院に行く日の朝、私は午後からの出勤でした。
旦那が出勤する時間に私が家にいる日は、いつも玄関先まで見送る事にしているのですが、この日はとても不思議な気持ちでした。
今から旦那はうちの外で精子だしてくるんか・・・そっから仕事行くのか・・・
なんて変に考えてしまったりして。
やっぱり精液検査というのは女性は経験できないものだし、男性からしたら緊張するし、恥ずかしいし、プライドを傷つけられるかもしれないな、なんて思うと、旦那に対する感謝の気持ちが溢れだしてきました。
『今日はありがとう、頑張ってね』
と言って旦那を見送りました。
精液検査の結果はその日のうちに出ると聞いていたのでいてもたってもいられない私。そわそわ。そろそろメンズルームかな、どんなDVDあったか後で聞いてみよ、なんて考える余裕もありましたが。
しかしやはり心配になって
『無事ですか』
とLINEしてみる。
応答なし。
もしかして結果に時間がかかるのかもなーと思い仕事に向けて身支度を進めていると、しばらくして旦那からの不在着信が。慌てて掛け直すといつもとすこし声色の違う旦那の声が聞こえてきました。
『あのー、えっとね、、僕、精子いませんでした』
『・・・無精子症でした』
『顕微鏡見せてもらったけど・・・ゼロでした』
途切れ途切れに動揺を落ち着かせて話す旦那の声と、『ゼロ』という単語は今でも脳裏から離れません。
私『まじで?』
旦那『うん』
私『そっか』
旦那『うん』
私『そっか、じゃあ、今日家帰ったらまた話し合いしようか、お仕事頑張ってね』
それしか言葉が見つかりませんでした。
電話を切った後、私の中では不思議と、“私のせいじゃなかった”
という安堵感が生まれ、今まで抱えていた不安から一気に解放されました。
その後、“てことは、子どもは授かれないって事?”
という不安が押し寄せてきました。
気が付いたら号泣していました。
声をあげて。
子どもを産む事がずっとずっと夢だった私。
結婚するずっと前から子どもがほしかった。
仕事よりも何よりも、子どもが、夢でした。
友達の妊娠や出産の報告が何よりも辛い時期もありました。
子どもを産むために結婚したわけではない、でも、この時味わった喪失感は一生忘れないと思います。
旦那からの電話は、仕事に行く30分前のことで、必死で涙を拭き、顔を戻して仕事モードに切り替えました。今考えるとよく涙止まったな、と思います。それでも行きの電車では目にいっぱい涙を溜めて、深呼吸しながら仕事に向かいました。逆に、自分の精液に精子がいなかったと知った旦那は今どんな顔して仕事してるだろうと思うと、息苦しかったです。
無事に仕事を終え帰宅した私は、プツンと糸が切れたように泣きました。反面、私が泣いても何も始まらないし変わらないという罪悪感もありましたが、どうにも出来ませんでした。
一旦泣き止むと、とりあえず、今日はいつもと変わりなく、晩御飯作って旦那の帰りを待っていよう、そう思いました。
そして旦那が帰宅。
思わずハグしてしまいました。
『ごめんね、俺のせいやったわ』
旦那の第一声でした。旦那の顔は強張っていました。
『そんなことないよ』
涙を堪えてそう言うのが必死でした。
晩御飯を食べながら、病院での話をしてくれました。
この数値が高いやら、やっぱり睾丸は小さいやら、先生が神妙な顔をしてしていたやら。そのときの私は冷静に話を聞けていたと思います。そしてその日は、一回の検査で全てを決めるのは早いから、有名な病院でセカンドオピニオンをしてみよう。と前向きな意見でまとまりました。
次の日の朝方、夢を見ました。
職場の上司に、不妊治療を始めたいので不定期的に休みを取ることを了承して欲しいと頼む夢でした。
『そうなん!了解!まー2年でも3年でも頑張ってみーや!はははは!!』
と数人の上司に軽くあしらわれる夢でした。
気付くと、ベットの上で号泣して目が覚めました。
すごく惨めで悔しくて情けない思いでいっぱいでした。 私に気付いた旦那が慰めてくれました。
『やっぱり私、赤ちゃん欲しい』
泣きながらそう言うのが精一杯でした。
旦那の前で涙を堪えていた我慢が限界にきた瞬間でした。
その日が休みだった私は、1日中泣きました。 これでもかというぐらい。 それでも想いと涙は止まりませんでした。